かーきアサヒの建築手記

建築デザインについての時短術や現留学先での生活の違いを面白くまとめていきます

違法ダウンロードや海賊版なんて当たり前!?中国の建築科に横行している闇に迫る!

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SANAA妹島和世が在籍する建築事務所)のインターンから帰ってきた実習生に伺った話ですが、デザイン案のレンダリング、そしてパース図の制作を中国のパース会社に委託しているとのことでした。事実、中国のパース会社にはコスパの良さに加え、優秀な人材がいるので多くの設計事務所が委託をしています。

 

しかし、どうして中国にはこれほどの技術的なソフトを扱える人材がたくさんいるのでしょうか。

今回はその背景にある環境に、そして闇について解説したいと思います。

ネットサービスの違法的な使用

約8年ほど前から中国に留学をしているわけですが、中国国内での精査が厳しいため、アマゾンやフェイスブックツイッターなどといったWeb上のサービスはVPNファイアウォールを介さず中国外のWebサービスを利用する方法)を使ってもアクセスできないといった現実があります。

 

その代わりにアリペイやタオバオといった中国内でのサービスが充実しているといった塩梅でしょうか…特に淘宝(タオバオ)では企業出店だけでなく個人や代理でも出店ができる点が大きな特徴で、さながらアマゾンとメルカリが組み合わさったようなものなのです。

 

しかしその実態は個人の運営しているネットショップが海外の会員制のサービスや様々な有料ソフト、映画のクラウド、雑誌等の電子データを二束三文で顧客に提供している、といった知的財産の保護ないしは著作権を無視したような商業目的の動きが横行しています。

 

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  • 原因は売り手や買い手が知的財産に対しての保護の意識が低いことと、政府が海外の資源を厳しく制限しているため流通が少ない、国内産業やプラットフォームがまだ発展途上にあることなどが挙げられます。

 

建築デザインには高い専門性や市民の安全を守る責任、決して安価とはいえない商業的価値があります。創作に使用されるソフトや資源が不透明なものでは、信用が地に落ちてしまう可能性もあります。使うも使わぬも自己責任といった次第でしょうか…

 ゼロに等しい初期費用

中国ではネットアイドルやネット配信者の活動が非常に盛んなこともあり、PCでの画像の修正やフィルターづくり、動画制作は特に学生の間で流行っています。フォトショやイラレなどのAdobeソフトも認知度が高く、流行に敏感な高校生であれば使いこなしている印象があります。

 

  • 例えばですが、建築デザインに使われる3DモデリングソフトのSketchUpは中国の検索エンジンで「SketchUp クラック版」と(中国語で)検索すれば、非公式のサイトで簡単にソフトを調達できてしまうのです。巧妙なことに製品ナンバーを自動で生成するプログラムでソフト認証を行うので、クラック版は正規版と何ら区別がなくなってしまうのです。

 

高校生でも中学生でもスマホかパッドさえあれば、こういったソフトをネットで探し出してタダ同然で利用できるわけです。

ソフトの学習資源が充実している

日本のサイトで3Dモデリングソフトをダウンロードしても、YouTubeでのソフトの解説やプラグインのサイトが英語だったりと、初心者には難しかったり、直感的にわかりにくい部分がありますし、市場が小さいとツールの使用者も少なく、よい学習資源になかなか巡りあえません。

 

中国は日本に比べて市場が圧倒的に大きいため、需要の分だけネットで公開される学習資源が充実しています。雑誌・画像の編集、動画・映画の制作、pythonなどのプログラミング、Web・メディアデザイン、などは特にここ数年力が入っているので、関連の動画はわかりやすく中国語で解説されてますし、これからの成長が期待されている分野でもあります。

逆に3Dモデリングソフトの学習資源は現時点ではまだまだ改善の余地がありますが、建築デザインの重要性が中国でも少しずつ認知され始めていることもあり、ここ数年で建築関連の雑誌やWebでの建築紹介の内容の質も上がってきています。

大学内の現状

現段階、中国の大学内では講師は基本的にモデリングについての授業を開設しておりません。設計の講義や学期末の答弁でプレゼンのアドバイスの中にソフトの使い方を教わる場合もありますが、全て学生が自主的に資料や環境、PCや道具、ソフトなどを用意します。

そのなか学生が正規品をわざわざ使うことはほぼありませんし、講師がソフトの違法ダウンロードについての言及なんてすることもありません。この状態を黙認しているのです。

まとめ

今回は中国でのネットサービスの違法目的の使用、そしてそれに取り巻く環境について触れてみました。やはり中国、といったところでしょうか、非常に残念な事実を知ってしまいました…

知的財産を軽視するのは信用の失墜を意味するだけではなく、個人の利益や権利を侵害することにもつながります。

例え学生だったとしてもモラルの問題は現役の建築士と同様に存在します。最低限のルールを守ることが優秀な人材を育てる基盤となっていくのです。