建築デザインとプレゼンの製作までを前提に、マインドマップの作成について解説していこうと思います。
マインドマップの作成
マインドマップ(Mind map)はクライアントにデザインの要点を伝えたり、アイデアをまとめたり、会議で討論する時などに使用されます。わかりやすい説明を心がけるのにマインドマップを活用するのが効果的でしょう。
マインドマップとは
マインドマップはブレインストーミングの一種で、表現したい単語を中心に置いて、放射状に関連する単語を表記するやり方です。木の枝のように単語を分岐させることから、分類された単語をブランチ(枝)と呼びます。
建築に使われるブレインストーミングの方法は、他にもKJ法やM-GTA法などがあります。
問題の解決のための手順を整理したり、現状の条件を分類するのが主な使用用途です。
ブレインストーミングとは
ブレインストーミング(Brainstorming 通称BS法)は、集団でアイデアを出し合い斬新なアイデアを連想したり発展させる技法のことです。
BS法は原則として、
- 判断・結論を急がない(結論厳禁)
- 奇抜・斬新な考えを歓迎する(自由奔放)
- 量を重視する(質より量)
- アイデアを組み合わせる(結合改善)
を遵守して情報を列挙していきます。そしてBS法で得られたアイデアをもとにマインドマップ、KJ法などを活用して情報を整理、記録をしていきます。
使用フォーマット
マインドマップのフォーマットとして、PC上やスマホでも編集・閲覧ができるようなソフトを利用するがおすすめです。例として香港開発ソフトのXmindZEN、そしてMicrosoftのOneNoteなどが使いやすいと評判です。
XmindZEN
XmindZENはUI(User Interface)の変更ができたり、マップの表記バリエーションが豊富なところが特徴です。オーソドックスなマインドマップUI、画像を差し込むなどの編集ができたり、内容を箇条書きの文に変換できることも便利な点です。
他にもPNG、PDFなどの出力があり、SNSにも作成したマインドマップをアップできる部分が他人とシェアする際に重宝します。
OneNote
OneNoteは画像データや文章を自由に画面内に構成・編集できる部分が特徴です。XmindZENと違って、キーワードごとの連携やUIの変更はできませんが、書面資料や雑誌の抜粋など格式が統一されてないものを素早くまとめるのに役に立ちます。
主にデザインの初期段階に使う敷地の写真やクライアントの意見など、画像に詳細な説明を加えるときに使われます。
マインドマップ作成の例
建築デザインでは、まず建築家が解決できる問題かどうかを判断しなくてはなりません。そのためにはデザインの立ち位置や優位性、将来的な展望なども事前に考慮して、お題に合わせてマインドマップを作成するが良いでしょう。
マインドマップを活用できる手順の例
例として、建築デザイン案は次のようなステップで発展させていきます。
- 自己分析
- 自分の立ち位置と目標を設定
- クライアントと対話を重ねる(問題理解)
- デザイン方針を確立する(デザインのスタイルなど)
- デザインのブレインストーミング
- 使用者層のイメージを固める
- コンセプト・プロジェクトの選定
- 市場の流れをリサーチ
- デザイン・プレゼン(今回の最終地点)
概念を一言で言い表せられない時、情報が複雑な時は一旦マインドマップに書き換え、考えを明確にしていきます。
自己分析
建築デザインで、自分の持っているスキルや技術について客観的に分析する必要があります。
デザインの表現の幅やプレゼンの技術など、自分の好みや得意分野を明らかにすることで、自分の強みを生かしたデザインをすることにつながります。
自分の立ち位置、目標設定
問題に直面したとき、建築物を建てることで問題を解決・改善できる場合、デザインの必要性が際立ちます。建築である以上、建築としての機能を果たすことを目標にしましょう。
自分がデザインするべきなのか、今デザインするべきなのか、誰に向けてデザインをするべきなのかを考えることで、デザインの動機がさらに鮮明になるでしょう。
クライアントとの対話
クライアントと対話を重ねることで提供したデザイン案が実際に採用されるかどうか、不安要素があるかどうかを検証します。
クライアントから情報を引き出すことで、デザインの差別化できるポイントを明らかにできます。
デザイン方針の確立
自己分析からクライアントの対話までの手順を踏まえ、デザインをする時の自分の方針やスタイル、想いを決めていきます。
デザインスタイルを決め、方針の妨げになる行動を避けることで、着実にプロジェクトを進められます。
デザインのブレインストーミング
プロジェクトに使うアイデアを敷地資料、クライアントの意向などから列挙していきます。チームに共有できるようにOneNoteに随時記録し、データベースにアップするのが良いでしょう。
BS時は最もマインドマップが必要になるステップでもあります。
※ブレインストーミング時の注意点
短期間で成熟したアイデアを出すことは間違いなく困難です。
チームで共同設計をする場合ブレインストーミングは1~2日ほど期間を空けて何度か実施して、最低一週間は時間を設けるべきでしょう。常日頃からアイデアをまとめるのも効果的だと思います。
使用者層のイメージを固める
クライアントは必ずしも使用者本人になるわけではありません。建築の最終的な使用者に向けて詳細な計画をすることで、長期使用に耐えられるものになります。
使用者の声が小さくても、なるべく設計に反映させましょう。
コンセプト・プロジェクトの選定
コンセプトは問題解決のための目的・意匠・方法になります。コンセプトを選ぶ際に必ず「問題提起」と「問題解決」の部分がセットになることを意識して、最終地点を見失わないように注意をしましょう。
他にも「方法」と「結論」、「理論線」と「現実線」のように組み合わせてコンセプトを導いても良いでしょう。
※コンセプト・プロジェクトを進行させるための情報
建築デザインのコンセプトには敷地情報、依頼人情報、建築類型学の3つの総合的な観点から詳細を見ていきます。
まず敷地情報として、
- 当地の気候・天候
- 卓越風(最も頻度が多い風向きの風)
- 太陽光の方角
- 自然植生
- 都市・町並み
- 敷地の歴史
- 土地への責任(宗教や都市計画など)
- 将来の展望
- 法規(どこに建築物を立てられるのかを検証)
などを調べていきます。
また依頼人情報として、
- 文化・信仰
- 趣味
- 行動計画(どのくらい建築を利用するのか)
- 政治的要素
- 性格・人格(使用者と依頼人が一致している場合)
などを調べていきます。
さらに建築類型学では、
- 建築の種類(博物館、学校、住宅など)
- 先例の研究
- どの問題を建築家が解決するべきか?
- 採用する構造の種類
などを明らかにしていきます。
これらの情報はマインドマップなどでまとめてから分析図、パースとして描きあげます。途中でクライアントには分析図、試算表などを提出して相談、合意が得られればプロジェクトを進める流れになります。
市場の流れをリサーチ
市場の流れを把握することで、関連デザイン、関連コンセプトの注目度を知ることができます。
競争が激しい市場でデザインすることになれば、競合相手、競合事務所との優位性などを調べる必要があります。競争が少ない市場では将来的に成長性のある分野を取り入れてデザインするのも良いでしょう。
デザイン・プレゼン
コンセプトに沿ってデザイン・プレゼン資料を準備します。
クライアントに分かりやすく伝えられるように話す内容の要点を挙げて、プレゼンボードや動画などを通して物語を話し、その物語とデザインを組み合わせて説明をしていきます。
マインドマップを扱う時の注意点
綺麗に整えて描こうとしない
マインドマップを綺麗に描くことに時間を割くよりも、連想や情報の整理を素早く分類することが重要です。いきなり完璧を目指すのではなく、目的に合わせてマップを描きましょう。
分類の順序を揃える
難易度のある操作になりますが、
例えば「食べ物」「いちご」「トマト」「果物」「野菜」の単語を並べた場合、
マインドマップでは
- 食べ物
- 食べ物←果物、食べ物←野菜
- 食べ物←果物←いちご、食べ物←野菜←トマト
のように抽象的なものを一番大きい分類にして、徐々に具体的なものを分けていきます。
分類の抽象度(抽象具合)は知識をつけたり、ものについて考えることで判断できるようになります。分類の抽象度を合わせることで、マインドマップの混乱を避けていきましょう。
全体を俯瞰する
マインドマップはたくさん描けば良いわけではありません。必要な分だけの分岐、内容に絞ることで思考プロセスを明確に表すことができます。
ブランチの分岐層は3~7層あたりに留めておくと理解しやすくなります。
一定時間ごとにマップの全体を俯瞰して、添削をしていきましょう。
重複を避け、漏れをなくす
ブランチを細分化していくと似た内容のものを記述したり、記述漏れが出てくる恐れがあります。重複した内容があると、マインドマップとしての効果が薄れてしまいます。
分類の方法を見直したり、違った視点でまとめて見るのが良いでしょう。
編集可能なものにする
紙面やPC上でマインドマップを描く際、一人だけでマップを完成させるよりも集団で編集することで、ミスや誤解を招く記述を減らすことにつながります。
紙面の場合、チーム全員がすぐに描けるように道具や場所を揃え、PCの場合、マインドマップの作成画面を中継したり、マップのデータを共有できるようにデータベースなどにアップしましょう。
文章ではなく、単語との関連で連想する
マインドマップ上のブランチは連想を容易にするために、文章よりも短いキーワードを書く事が推奨されています。
文章よりも単語である方が、思考の拡散を助けてくれるので、さらに自由な発想につながります。
補足
プレゼンボードの作成についてまとめました。