- はじめに
- 建築界の12ヶ月
- 1月
- 2月
- 3月
- 2020年ヴェネチア建築ビエンナーレ延期へ
- イボンヌ・ファレルとシェリー・マクナマラが第42回プリツカー賞受賞
- イオ・ミン・ペイ事務所パートナーのヘンリー・N・コブ死去
- 2020QS建築ランキングトップMITに
- イタリア建築士Vittorio Gregotti(ヴィットリオ・グレゴッティ)死去
- FORTUNE誌”最も偉大な現代設計”がiPhoneに決定
- 2020東京五輪延期に
- Kerry Hill(ケリー・ヒル)の遺作青島涵碧別荘の取り壊しが開始
- アメリカ建築士、教育家Michael Sorkin(マイケル・ソーキン)死去
- アメリカ建築士Michael McKinnell(マイケル・マッキンネル)死去
- 345m、Edge展望台がオープン
- 博物館と美術館がオンライン提供へ
- ピーター・ズントー案のロサンゼルス芸術博物館に民間が異議申し立て
- 4月
- 5月
- 6月
- 7月
- 8月
- 9月
- 10月
- 透明木材の開発!
- ケンゾー創業者、高田賢三死去
- OMA、Axel Springer開幕
- プリツカー賞、初めてのリモート
- 悲観的なお手紙
- Wolfgang Tschapeller(ヴォルフガング・チャペラー)2020年ヨーロッパ建築賞獲得
- Sidewalk Labsが”Delve”AI実用化へ
- スケッチチャリティー、ベイルート支援へ
- イタリアの巨匠デザイナーEnzo Mari(エンツォ・マーリ)死去
- SDGsへの一歩、2020 Obel Award発表
- IPAフォトコンテスト、最優秀作品発表
- 2016年プリツカー受賞者アレハンドロ・アラヴェナ、プリツカー賞審査委員に
- 2020ベルリン建築賞発表
- 安藤忠雄最新作オープン情報
- 11月
- 12月
- おわりに
はじめに
建築手記ブログを残し始めてからなんと一年が経過しました。
まずは記事を見てくれる全ての方々に感謝!建築を勉強する学生たちの参考にしてもらえると非常に嬉しいです。
2020年は誰もが予測できなかった未曾有の一年でしたが、このまま色んな出来事が息をつく間もなく流されていくのは実に切ない…ということで、建築界、デザイン界に関する12ヶ月間の出来事をまとめようと思います。
建築界の12ヶ月
1月
イタリア建築士Adolf Natalini(アドルフ・ナタリーニ)死去
Taliesin建築学校運営停止へ
- フランク・ロイド・ライトが創設したTaliesin建築学校が創始88周年を迎えたものの、運営が立ち行かなくなり2020年6月に停止へ、のちに資金供給を受けて転機を掴むか。
AIA建築賞発表
- AIA建築賞発表、吉首美術館などを含む8項目が受賞。
フォスター事務所ワールドトレードセンター2期の設計権獲得
- 残念ながらもBIGが設計を退き、フォスター事務所が新たにニューヨークワールドトレードセンター2期の設計権利獲得。
2月
シドニーオペラハウスが閉館、音質改善へ
- 2月1日、シドニーオペラハウスが閉館と改修。二年間に渡るリニューアルによって音質問題は改善されるのか。
武漢火神山病院が建設11日目にして竣工
- 2月2日、武漢火神山病院が建設11日目にして竣工。驚異的な建設速度を誇った例である。
トランプがクラシカル建築を米国連邦政府建築のスタンダードに
米国鋼構造学会の2020年最高栄誉賞発表
- 2月4日、米国鋼構造学会の2020年最高栄誉賞である、鋼構造建設&建築設計賞を発表。
サーペンタイン・ギャラリーのデザイナーがCounterspaceスタジオに決定
- 2月10日、Serpentine Gallery Pavilion(サーペンタイン・ギャラリー)が最年少デザイナーのCounterspaceスタジオの三人の選出を発表。Amina Kaskar, Sumayya Vally, そしてSarah de Villiersの三人だ。
OMAの展覧会がグッゲンハイム博物館にて開幕
フランス建築家Yona Friedman(ヨナ・フリードマン)死去
3月
2020年ヴェネチア建築ビエンナーレ延期へ
イボンヌ・ファレルとシェリー・マクナマラが第42回プリツカー賞受賞
- 3月3日、アイルランド建築士のYvonne Farrell(イボンヌ・ファレル)とShelley McNamara(シェリー・マクナマラ)が第42回プリツカー賞受賞。女性建築士としてのプリツカー受賞は妹島和世、ザハ・ハディド以来の快挙。
イオ・ミン・ペイ事務所パートナーのヘンリー・N・コブ死去
- 3月3日、イオ・ミン・ペイ事務所創始パートナーである Henry N. Cobb(ヘンリー・N・コブ)死去。
2020QS建築ランキングトップMITに
- 3月4日、2020QS建築、建築環境学科における全世界大学ランキングで、MITがトップに君臨。
イタリア建築士Vittorio Gregotti(ヴィットリオ・グレゴッティ)死去
FORTUNE誌”最も偉大な現代設計”がiPhoneに決定
- 3月16日、FORTUNE誌で”最も偉大な現代設計トップ100”のランキングにて、iPhoneが1位を飾る。
2020東京五輪延期に
- 3月24日、東京五輪2020の延期が決定、のち30日に2021年の夏に開催が予定された。新型コロナウイルス感染者拡大がスポーツ、アスリートへの影響そして批判に繋がると判断されたため。AKIRAのカットがなんとも皮肉だ。
Kerry Hill(ケリー・ヒル)の遺作青島涵碧別荘の取り壊しが開始
- 3月25日、海岸線自然生態機能の回復のため、Kerry Hill(ケリー・ヒル)の遺作である青島涵碧別荘の取り壊しが開始。
アメリカ建築士、教育家Michael Sorkin(マイケル・ソーキン)死去
アメリカ建築士Michael McKinnell(マイケル・マッキンネル)死去
345m、Edge展望台がオープン
- 西半球で最も高い室外ビューポイント、ニューヨークハドソン広場Edge展望台がオープン、高さは345mを誇る。
博物館と美術館がオンライン提供へ
- 全世界2500を超える博物館と美術館がオンライン展示サービスを提供。
ピーター・ズントー案のロサンゼルス芸術博物館に民間が異議申し立て
- 民間企業が非公式の”LACMA Not LackMA”コンペを発起、ピーター・ズントー案のロサンゼルス芸術博物館に異議を唱えたことになる。
4月
フォスター事務所が児童向けの建築教育活動宣言
- 4月1日、フォスター事務所が児童向けの建築教育とエンターテイメント活動を行うと宣言。
エルメス専属デザイナーLeïla Menchari(レイラ・メンシャリ)死去
2020建築童話コンペの受賞者発表
- 4月9日、2020建築童話コンペの受賞者発表。以下が優勝作品のカット。
イラク建築の父、Rifat Chadirji(リファト・チャディルジ)死去
BIG設計のスイス博物館竣工へ
- 4月13日、BIG設計による、スイスの螺旋時計博物館の竣工が発表された。
蓮の花スタジアム建設へ
- 4月16日、広州恒大サッカースタジアムの建設開始、蓮の花を模したパースが物議を醸した。
2020年度日本建築学会賞発表
- 4月16日、2020年度日本建築学会賞、受賞作品を発表。
2020年eVolo Skyscraperコンペの受賞作品を発表
- 4月20日、2020年eVolo Skyscraperコンペの受賞作品を発表。中国の作品が優勝を飾った。
奇怪な建築が粛清へ
- 4月27日、中国に横行している奇怪な建築を中国政府が本格的に粛清すると宣言。
伝説の批評家Germano Celant(ジェルマーノ・チェマーノ)死去
- 4月29日、イタリアの美術史家Germano Celant(ジェルマーノ・チェマーノ)が新型ウイルス肺炎により死去。貧困芸術運動の先駆けであり、伝説の批評家だった。
パリオリンピックのスタジアムコンペ案決定
- Ateliers 2/3/4チームが2024年度パリオリンピックのスタジアムコンペに勝利。
ドイツコンクリート建築賞発表
- 2020年ドイツコンクリート建築賞受賞作品を発表。
5月
ドバイ万博延期へ
- 5月4日、10月末に開幕を予定していたドバイ万博が来年10月1日へ延期が決定。
コペンハーゲン、2023年世界建築都市として選出
John Wardle(ジョン・ワードル)、2020オーストラリア最高建築賞獲得
- 5月6日、2020オーストラリア最高建築賞状、建築士協会金賞をJohn Wardle(ジョン・ワードル)が獲得。
Sidewalk Labsトロント計画頓挫
ブルガリア芸術家クリスト・ヴラディミロフ・ヤバシェフ死去
- 5月31日、ブルガリア芸術家Christo Vladimirov Javacheff(クリスト・ヴラディミロフ・ヤバシェフ)が死去。色鮮やかなドラム缶の作品は圧巻だ。
漢京センターが深センにて正式に交付
- 中国最高高度の純鋼構造建築である漢京センターが深センにて正式に交付。
6月
バチカン博物館が再オープン
隈研吾作品オープン、建築とメディアの融合へ
BLM運動、建築界にも
- 6月上旬、アフリカ系米国人ジョージ・フロイドの不幸な死により、建築事務所や業界の組織などが人種差別抗議運動に参加する現象が見られた。
24名の巨匠たちによる経済ルネサンス宣言
- 6月上旬、文化、経済、創作、建築分野における24名のリーダーらが”For a cultural revival of the economy"(経済のためのルネサンス)宣言をする。
アメリカ建築士Edward Tuttle(エドワード・タットル)死去
アメリカグラフィックデザイナーのMilton Glaser(ミルトン・グレイサー)死去
- 6月26日、アメリカグラフィックデザイナーのMilton Glaser(ミルトン・グレイサー)死去、”I ♥ NY”のアイコンは彼の代表作だ。
7月
オスカー・ニーマイヤーの最後の遺作竣工へ
- 7月初旬、オスカー・ニーマイヤーの最後の遺作である”ニーマイヤー球体”がドイツのライプツィヒにて竣工。
大聖堂の屋根は従来の形に修復
- 7月9日、フランス大統領エマニュエル・マクロンが焼失したパリ大聖堂の屋根に現代案で修復することを断念、教会は”最後に認知されていた状態”に復元される予定。
アヤソフィア、モスクへ回帰
2025年万博会場設計者、藤本壮介に
- 7月13日、2025年日本万博協会は藤本壮介を万博会場設計者に認定すると発表。
AA初の女性校長エヴァ・フランシュ・アイ・ギラバート
”Revitは時代遅れ”抗議
- 7月下旬、ZHA、ロジャース事務所らが、Autodesk社のデザインツールRevitが”建築業界の使用需要を満たせていない、深刻な不備がある”として公開署名で抗議。
8月
ドイツICONIC賞発表
RIBA主任選出、Simon Allford(サイモン・アルフォード)
- 8月11日、AHMM事務所の創設者Simon Allford(サイモン・アルフォード)が次期RIBA主任に任命される。
フォスター、ウェストミンスター宮殿臨時建築の修正案を提出
- 8月23日、フォスター事務所はウェストミンスター宮殿の修復期間に、国会議員のための臨時建築の修正案を提出。
いのちの輝きくんロゴ決定
- 8月、2025年日本大阪万博のロゴが発表。
リチャード・ロジャース、円満退職
- 8月28日、リチャード・ロジャースがRSHP事務所の創設43年後に退職。
BAMランキングトップ、GSD
COVID-19記念碑がウクライナで建設開始
- 全世界初の大型”Covid-19”犠牲者を記念する記念碑が、ウクライナで建設開始。
9月
眠れるホテル16選
- 9月2日、イギリス”National Geographic”による”The Big Sleep Awards”(睡眠最優賞)にて16項目ごとにホテル建築が選出された。
”東京ライド”映画放映
- 9月3日、Bêka & Lemoineの最新ドキュメンタリー”Tokyo Ride”放映、西沢立衛による東京の旅が題材だ。Vimeoで視聴可能だ。
2020 ALSA Professional発表
都市を繋げろ、2020 AIA 25年賞
- 9月4日、Eric Owen Moss(エリック・オーウェン・モス)建築事務所による”Conjunctive Points__The New City”が2020 AIA”25周年賞”を受賞。
イギリス設計士Terence Conran(テレンス・コンラン)死去
- 9月12日、イギリス設計士Terence Conran(テレンス・コンラン)が死去、生前はThomas Heatherwickに大きな影響を与えていた。
渋谷区に17のトイレが集結!?
- 安藤忠雄の渋谷区公共トイレが竣工。不透明になるガラスの公共トイレなどが話題に。
MVRDV作品、美術品倉庫竣工へ
- MVRDV手がけるロッテルダムのボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン博物館の公共芸術倉庫が竣工。
David Adjaye(デビッド・アジャイ)2021RIBA金賞獲得
- 9月終わり、David Adjaye(デビッド・アジャイ)が2021RIBA金賞を受賞。これは黒人建築士初の受賞として誠に快挙である。
10月
透明木材の開発!
- 10月1日、アメリカ森林製品研究所による透明木材の開発が進展との発表あり。
ケンゾー創業者、高田賢三死去
OMA、Axel Springer開幕
- 10月6日、OMA新作のAxel Springerが開幕、ドイツ大統領が現地でスピーチをした。
プリツカー賞、初めてのリモート
悲観的なお手紙
Wolfgang Tschapeller(ヴォルフガング・チャペラー)2020年ヨーロッパ建築賞獲得
Sidewalk Labsが”Delve”AI実用化へ
- 10月13日、Alphabet傘下のSidewalk Labsが”Delve”と呼ばれる人工知能によって、都市計画モデルを数分で数百万もの可能性を生成することに成功。
スケッチチャリティー、ベイルート支援へ
イタリアの巨匠デザイナーEnzo Mari(エンツォ・マーリ)死去
SDGsへの一歩、2020 Obel Award発表
- 10月下旬、2020 Obel Awardでバングラデシュの多機能建築”Anandaloy”が受賞。
IPAフォトコンテスト、最優秀作品発表
2016年プリツカー受賞者アレハンドロ・アラヴェナ、プリツカー賞審査委員に
2020ベルリン建築賞発表
- 10月30日、2020ベルリン建築賞受賞作品が発表。
安藤忠雄最新作オープン情報
11月
2020年オーストラリア国家建築賞発表
- 11月5日、2020年オーストラリア国家建築賞公表。環境への順応性、SDGsが今年の主題だった。
最後の一機が離陸、空港が廃港に
- 11月8日、GMPの代表作、ベルリン・テーゲル空港の最後の飛行機が離陸、間もなく廃港に。
2019 Emporis高層ビル賞発表
- 11月10日、2019 Emporis高層ビル賞受賞作品発表、ロシアのサンクトペテルブルクに建設されたラフタ・センターがランキング首位。
インド建築士Kuldip Singh(クルディップ・シン)死去
オスカー・ニーマイヤー賞発表
- 11月中旬、2020年チリのナンカグア新市庁舎がオスカー・ニーマイヤー賞一等賞を獲得。
第7回スイス建築発表
- 11月17日、BRUTHERスタジオが第7回スイス建築賞を受賞。
VRで体験できる日も遠くない?ライトの遺作再現
シザ新作オープン
- 11月21日、シザ+カロス新作の華茂芸術教育博物館が寧波にてオープン。
栄誉は簡単には消えない
- 11月27日、The Johnson Study Group(ジョンソン研究グループ)はフィリップ・ジョンソンを白人至上主義としての全ての栄誉を抹消することを呼びかける。しかし、作品に非はないと考える意見も。
安藤忠雄イギリス作品、地元からあまり愛されず
- 安藤忠雄のイギリス唯一の建築作品が、用途で争議になり取り壊しに。現状ホームレスの溜まり場になってしまっていた。
ザハ遺産の行方は寄付へ
- ザハ・ハディドの1億ポンドの遺産の大部分はアラビア女性の建築教育のために寄付、そして支援されることになった。
中国の建築制度、さらに海外の基準を取り込む
- 中国国務院会議で、設計、施工、管理などの企業資格を簡略化することを発表。
最先端の乗り物をBIGが手がける
- BIGはKiloと共にVergin Hyperloop(高速輸送システム)の車体設計に参加、今回初めて機体の有人テストを行った。
12月
Architects Declare環境と経済は共存できないのか
- 12月初旬、環境保護組織によりArchitects DeclareのZHAとフォスターアンドパートナーズの事実上の脱退を余儀なくされる。
ヴェネチア水浸し、モーゼまたも作動せず
AIA 2021年金賞エドワード・マザリアに
ワクチン接種のためのシェルター実用化へ
- Stefano Boeriチームが無償でイタリア新型コロナウイルス肺炎のワクチン接種シェルターを設計、2021年1月に使用予定。
流行色はイエローとグレー
- Pantoneより、2021年の代表色はUltimate Gray(17-5104)とIlluminating(13-0647)だと発表。
チッパーフィールド、ミース作品の修復完了
- チッパーフィールドがミースの設計したベルリン国家美術館の修復を完成させた。
資本の前に建築遺産はやや無力
- ルイス・カーン作品であるインド経営大学宿舎18基を取り壊しへ、新たに”名も無き建築家”の作品と入れ替わりに。何とか保存できないものか。
スイス建築士Luigi Snozzi(ルイージ・スノッツィ)死去
おわりに
執筆時2021年1月中旬ですが、現在この新型コロナウイルスの影響ですでに全世界で200万人が犠牲になり、累計感染者数は1億人に差し掛かろうとしています。
毎日ニュースで流れてくるのは暗い現実ばかりで心が折れそうになりますが、それでも尚2021年に状況が好転することを私は信じています。
私たちの大切な人を守るため、ウイルスとの共存を考え、そして建築や文化という儚いものの保存ために、如何に知恵を振り絞って行動できるかが未来の状況を打開する鍵なのです。