建築デザイン時短術!ポートフォリオの作成
建築デザインにおいて自分の能力を表現するためのポートフォリオの作成について解説をしていきます。
私自身も新しくポートフォリオを作成する機会が増えてきたので、少しでも参考にしていただけたらと、今回は要点をまとめてみました。
ポートフォリオとは?
Portfolio ポートフォリオとは、個人による建築デザインの作品集のことです。
ポートフォリオは個人の建築デザインの能力を体現する手段であり、作品の集大成として、冊子やPDFファイルとしてまとめて海外の大学や有名デザイン事務所への入学・編入・採用などへ向けて申請するために準備する重要な材料のひとつです。
ポートフォリオの形式
ポートフォリオとプレゼンの違い
建築デザインでのプレゼンボードをそのままポートフォリオに同じレイアウト、同じ比率で流用するのは現実的ではありません。
なぜならポートフォリオとプレゼンボードでは、
- サイズが違う
- 審査・鑑賞の方式が違う
- 重点が違う
上記の三点に大きな区別があるため、目的に合わせて個別に再設計・編集を加える必要があります。
サイズの違い
ポートフォリオはA4、A3のサイズが主流で、基本的にはこの紙面サイズをベースとして、変化を加えていきます。
プレゼンボードは一般的に、A2、A1、A0の紙面サイズを採用しています。
サイズはレイアウトに大きく影響し、プレゼンボードのA1サイズをA4サイズにそのまま等比縮小すると、図面のディテールが失われたり、文字が潰れて見えなくなってしまうという問題点がでてきます。
そのため、図面のディテールによって情報過多にならないように、機能の色分けをした平面図を線型+モノクロのみに変更したり、文字表記をまとめて図面がスッキリするようなどして紙面を構成する必要があります。
さらにポートフォリオには必ず枚数制限が設けられたり、PDFファイルのデータ量に厳しい制限が課せられるので、事前に提出資料の条件に合わせて、コンパクトに表現すべきものをまとめる必要性もあります。
審査・鑑賞方式の違い
ポートフォリオはPCモニターで閲覧したり、冊子として手元で閲覧されます。
プレゼンボードは一般的に壁に貼り付けられるため、ボードとは一定の距離をとって鑑賞されます。
PCモニター上で閲覧したり、冊子や製本したものを手に取って閲覧することで、視認距離と視認角度が異なります。
プレゼンボードのパネル上でレイアウトをする場合、最も重要な情報は一定距離離れた状態(およそ1m)でも視認できるように調整し、その次に重要な情報は0.3m~0.5mの距離で視認できるように作成します。
印刷するポートフォリオでレイアウトをする場合、全ての情報が正常な視認距離範囲内(0.3m~0.4m)に収まるように調整しましょう。また、目を近づけて見えるような内容はごく一部(画像の参照引用元など)に限ります。
重点の違い
ポートフォリオはデザイナー個人の能力を伝えるための道具なので、個人のデザイン表現能力・思考に重点が置かれます。
プレゼンボードの重点は建築デザイン案そのものを判断することにあるので、教師の評価もデザイン案の出来、善し悪しに基づいています。
プレゼンボードに必要な情報として、デザイン案の詳細を含む図面を全て載せる必要があり、デザイン案で考慮した部分を網羅的に記載します。
ポートフォリオは個人のデザインの能力を見るので、図面を取捨選択し、思考プロセスやデザインの構想を体現できるものだけ選ぶ必要があります。
ポートフォリオの構成
ポートフォリオは、
-
表紙と裏表紙
- 本の扉、目次
- 作品ページ
- CVと本人PR
上記の通り、大きく分けて四つの内容で構成されます。
表紙と裏表紙
Cover、Back Cover 総じて表紙はポートフォリオの第一印象を大きく左右する部分です。表紙に必要な内容として、
- 作品集の名前・題名
- 作者の名前
- 申請を希望する専攻や部門など(大学による)
- 連絡方法(必須ではない)
などがあります。表紙や裏表紙には特別な決まりはありませんので、自由に構成できる部分となります。
本の扉、目次
Fly Leaf、Contents 総じて本の扉、目次はポートフォリオを開いたときの一番最初のページです。
本の扉は、
- 空白にする
- 目次と組み合わせる
- 自身の設計理念の紹介
などの内容に編集することができます。
目次には、
- プロジェクトの名前
- プロジェクトを手がけた年
- プロジェクトを記載しているページ数
- プロジェクトを手がけた人の名前(合同作品は必ず記載)
などの情報を載せましょう。
原則として、プロジェクトはなるべく本人だけでデザインした方が個人の能力を反映できるので、合同作品が少ない方が良いですし、掲載したとしてもプロジェクト内の自分の創作した範囲を明記する必要があります。
特にポートフォリオに合同でデザインしたプロジェクトを大学や事務所によっては掲載するのを禁止・制限しているところがあるので、かなり要注意です。
目次のレイアウトの構成は多種多様で、
- プロジェクトごとの写真を載せる
- プロジェクトごとに色を分ける
- 目次の色と作品ページの色調を統一する
などの工夫を施すことができます。
作品ページ
Project Pages もとい作品ページはポートフォリオの主体になります。建築デザインのプロジェクト紹介以外で、自分の興味のある分野の作品を載せても良いでしょう。
特に撮影、絵画、動画などは自分の実力を表現するために非常に効果的です。
注意すべきはポートフォリオには必ず重点があります。希望する専攻分野や職務に合わせて内容を検討していきましょう。
CVと本人紹介
CV(Curriculum Vitae)、Personal Statement もとい本人紹介とはいままでの教育の経歴、専門分野に携わってきた経歴を指します。
CVの内容として
- 教育背景
- 実習・インターン経歴
- 過去の研究・発表した論文など
- 過去に得た賞
- 出版物
などを詳しく載せる必要があります。
また、CVは大学や事務所側が要求しない限りは、必須内容ではありませんし、もっと個性的な本人紹介を載せても良いでしょう。
どうやってポートフォリオを評価するのか?
ポートフォリオの形式を熟知した上で、さらに質を上げるために、評価基準について触れましょう。
ポートフォリオを判断する基準は主に、
上記の二方面の評価をします。
さらに基本的な内容として、
- デザインのための道具を利用する能力
- デザイン技能
- デザインロジック
が評価されます。
デザインのための道具を利用する能力というと、Photoshop、CAD、Rhinocerosなどのソフト使用の熟練度、手描きの熟練度、模型制作の能力などを見られます。特に事務所が人員採用する際にはこの部分が重点的に見られます。
デザイン技能では、モデリング、画像処理、建築の専門知識、空間の把握能力などを評価します。
デザインロジックとは、建築士は何を考慮し、何を解決するかといった思考の過程を明確に表すための能力をいいます。
ポートフォリオのロジック
ロジックが鮮明なポートフォリオは建築士の設計理念を読者に明確に伝えることができます。そのため、ポートフォリオのロジックは美的センスよりも重要です。
ポートフォリオのロジックとして、
- 情報の取捨選択
- 視線移動
の二つの要点があり、
設計案をただ冗長に説明するのではなく、情報の取捨選択をすることで、デザインの差別化をしたポイントをメリハリをつけて表現することができます。具体的にはデザインのロジックを分析図などで表現し、基礎図面を補助として加えるだけで十分です。
また、レイアウトする際に、読者が閲覧する内容の順序を考慮する必要があり、読者の視線をデザインした通りの視線経路で見てもらうことで、わかりやすく内容を伝えることができます。
情報の取捨選択
およそ情報を全て列挙すると、
- 周辺の交通分析
- 公共空間分析
- 緑地分析
- 文脈分析
- 区域分析
- コンセプトラフ案
- 推敲した模型案
- 平面図
- 立面図
- 断面図
- 構造局部図
- 効果図面(レンダリング)
- 分解図
- 断面透視図
- アイソメトリック図
などがありますが、これら全てを狭いページの中に詰め込むことはできません。
これをさらに、
- 発見した問題への分析
- 問題を解決するための推敲した過程
- 思考深度のある図面設計
上記三つのフィルターにかけて、デザインの思考プロセスの伝達に必要なものだけを選びます。
視線移動
レイアウトの図面は漫画のコマ割りと同じように、一定のリズムとルールがあります。
縦に展開される視線移動であるなら、
- 中心図面(大きな図面)を縦方向へ展開
- 展開した先に小さな図面で補足説明し、斜め上方向へ視線を移動
- 中心図面の隣に縦に展開した分析図を下方向へと視線を移動
横に展開される視線移動であるなら、
- 横に大きく展開した中心図面、視線は横方向へ展開
- 中心図面に並行して分析図を横方向へ視線を移動
といった基本的な流れを事前に決めておきます。
視線を誘導する方向を決めてそれを遵守することで、スッキリしたレイアウトを作成することができます。さらにページとページ間の前後ロジック関係をわかりやすくまとめましょう。
ポートフォリオの美的センス
デザイン分野では美的センスはかなり注目されるポイントになります。
しかし美的センスといってもデザインプロジェクトそのものが美しいだけでなく、ポートフォリオが印刷物としての、
- 構図の原則
- 色彩の選択
- 文字の設定
などに注目して作成する必要があります。
構図では、図面の濃淡、空白の残し方、図面の比率或いはグリッドシステムについて考慮する必要があります。
色彩はポートフォリオ全体の色調を合わせて、作品のスタイルと統一させる必要があります。
文字や書体では、まずはわかりやすく読めて、その次に書体や行間などを調整します。
図面構図
天、地、小口、のど
図面の構図ではグリッドシステムの要点をおさえていきます。
- A4(縦297mm:横210mm)、見開きのページ
上記のサイズを例として、まずは文字内容を記入する範囲を決めましょう。
ページの端の幅を小口、上端の幅を天、底幅を地、そしてページを跨ぐ谷の幅をのどといいます。
私の場合、A4サイズのレイアウトでは、
- グリッド幅:実際の距離となります。
- 天:17.5mm
- 地:20mm
- 小口:15mm
- のど:15mm(巻き込みがあると20mm以上)
上記の通りに設定します。
天を17.5mm、地を20mmに設定することで、上下の枠組みが上に2.5mm偏る構成になります。中心の枠組みをやや上に配置することで、テキストと図面がやや高重心気味になります。
高重心のグリッドでは、内容をなるべく上端に寄せることで、軽快でリズム感のあるレイアウトにすることができ、低重心のグリッドでは、どっしりと安定感のあるレイアウトにできます。
ここでは製本した際に地を大きく残し、本を持つ手/ページを開く手が内容にあまり重ならないように空白を残すことで、実際に手にとった時に読むリズムを崩すことなく閲覧出来るようになります。
小口とのどはPDF版、印刷版の製本の種類で大きく違いが出る部分です。
一般的な製本(50ページ~)をする場合、ページを跨ぐ部分で曲面に変形する部分があり、のどが小さいと内側ギリギリに印刷したテキストが見えづらくなります。
枚数の限られているポートフォリオでは、基本的に本自体が全開きできるもので製本します。その場合、のどと小口を統一して15mm(変更可)に設定ができます。印刷の都合上、のどを15mmに設定するのが難しい場合20~23mmまで余白をとると良いでしょう。
一方で、PDF版ではページのカウントがありますが、ページを折って閲覧するわけではないので、ページを跨ぐレイアウトをしても、視認性への影響は少なくなります。PDF版のポートフォリオのみを提出するなら、レイアウトの自由度も上がります。
分割
グリッドの分割では外枠の空白からさらに n 等分の枠に分割していきます。
グリッドの分割はページ毎で統一しても良いですし、変化を入れるために分割の数を増やしたページを部分的に挿入しても構いません。
よく使われる分割法として、見開きのA4の2ページを12個の正方形に近いグリッドに分割したり、36個の小さいグリッドに分割し、部分的に空白を残す方法などがあります。
分割の枠の数は分析図や内容の量応じていくつか統合したり、あえて空白にして残すことで、情報を詰め込み過ぎないようにコントロールができます。
私の場合、分割の際に、
- 枠の数
- 枠と枠同士の間隔
- 空白を残す部分
を最初に決めてレイアウトをしていきます。
例えば、テキストと画像が隣接する作品紹介のようなページの場合、紹介内容のためにスペースを残したいので、分割された枠の間隔は6mm程度残してなるべくコンパクトに詰め込む形でレイアウトをします。
ダイアグラムのような重複する図面をたくさん載せる場合、枠の数を増やして(枠毎のサイズを小さく)、全体をスッキリみせるために枠との間隔を10mm程度ほど開けます。
空白部分は一貫して2ページ毎、或いは毎ページの底に一列分使わない枠を残し、図面を高重心のレイアウトに仕上げます。コンパクトに情報が詰め込まれていて、尚且つしっかりと余白が取れたグリッドシステムを利用しましょう。
特殊な比率関係
横型のレイアウトで、横長の図面を上下にページ半分ずつ配置しがちですが、図面の大きさや比率に変化がないと単調でつまらないレイアウトに見えてしまいます。
例えば、横長の大きな図面をページの上部または下部に置き、ページの1/3、2/3を占めて、残りのスペースに正方形の図をひとつ組み合わせ、残りを空白+文字による説明を加えることで、有機的なレイアウトに仕上げることができます。
縦型のレイアウトで、縦長の図面を配置するときでも、図面毎の余白が左右どちらかにまとまっていることも重要です。
例えば、レンダリング図のように、色彩が多く、枠内の全てのスペースが埋まっている図面を中央に配置して、左右両端に分析図をおいてしまっては、分析図の空白が両方にできてしまい、レイアウトが不安定(左右に揺れるよう)になってしまいます。
大きくて色彩の多く、色の濃い図面は画面の端へ、分析図を含む小さい図面を固めて配置すると良いでしょう。
不定形の図面をレイアウトするときでも、グリッドシステムを活用して、空白箇所に文字などをグリッドに従って配置すると、ページ全体に平行関係ができて図面が安定します。
色彩選択
ポートフォリオの色彩スタイルは大きく分けて、
- スタンダードカラー
- ダークカラー
- モノクロ
上記の3種類があります。
スタンダードカラーは白地を背景として、淡い配色で構成されていて非常にスッキリと分かりやすく印象づけることができる色調です。主に青、緑、黄色、そして飽和度の低い色を使用します。
ダークカラーは黒地を背景として、全体の色が濃く、独特の雰囲気を感じさせる個性的な色調です。線形は白。主に赤、黄、青などのハイライトの色で図面を強調し、飽和度の高い色を使用します。
モノクロはその名のとおり、白と黒の二色、そして濃淡のある灰色などを駆使して無機質な印象を与えることが出来る色調です。線型を多用する図面との相性が良く、やや玄人向けのような印象を与えます。
上記の色彩スタイル以外にも、
- 同色系
- 同飽和度
- テーマカラー
といった方法から主な色調を決めることができます。
特に黒、紺、水色、白、オレンジといった、対比色のあるテーマカラーはレンダリング図との相性が非常に良く、寒色系の色の濃淡で遠近距離と落ち着きを表現し、オレンジといったビビットカラーが陽の光と照明を表現する、生命力溢れるアクセントになります。
色彩選択で注意すべき点
印刷する場合注意しておきたいのが、色差です。Photoshopやillustratorなどでは特別に設定をしていなければ、RGBの色彩表示になっています。PC画面上でしか表現できない色彩の幅を多用して印刷してみると、色味に大きな差が出ることもあります。
印刷物に使用される色彩はCMYKで表示されるため、CMYK表示にして色彩チェックをしたり、カラーカード、色見本などで実際の印刷の色を確認しましょう。
私は特に色差による調整が時に大きな時間ロスになってしまうので、初めから色を限定したり、オレンジ+黒+白などRGB、CMYK間の色差の少ない組み合わせを好んで使用したりします。
文字設定
読みやすい文字の設定には、
- 書体
- 書体の大きさ
- 行を揃える・行間
などの要素が絡んできます。
書体はテキストの雰囲気に大きく左右し、表題と本文で書体を使い分ける際に、相性の良い書体同士で組み合わせる必要があります。そして、書体は個人の好みで選ぶのを推奨します。
よく使う日本語の書体として、視認性の高いリュウミン「A-OTF リュウミン シリーズ」、強調したい部分では「遊ゴシック」などを使います。内容を詰め込みたい場合、「AXIS Condensed(半角のように圧縮されている)」のようなフォントを部分的に利用することもあります。
英字の書体だと基本はヘルベチカ「Helvetica Neue LT pro Condensed」、または少し個性的なディン「URW DIN Semi Condensed」などを図面の表記に用いたりします。
レイアウトそのものの構成を優先した場合、特に英字はフォント毎の面積をかなり取られてしまうので、文章そのものを簡潔にまとめるだけでなく、圧縮されたフォントを使うことが多くなります。
書体の大きさは目安としてA4サイズの紙面では、10ptを基本に、詳細な説明或いは小さく注釈するときに使用する書体は6ptほどの大きさで表記すると良いでしょう。
行間は視線が往復する時の上下間隔に影響します。上記のように10ptの文字であれば、行間は14pt、6ptの文字であれば、11.5ptに設定するのをおすすめします。
行のはじめを揃えたり、上下で、もしくはページを跨いで位置がずれないようにAdobe Indesignなどで補助線を用いたり、テーマページを編集しましょう。
レイアウト前の下準備
レイアウト前に必要な下準備として、
- 過去の図面を整理
- 各大学の要求、事務所の要求について調べる
- スタイルを決める
上記の仕事を計画的に進める必要があります。
図面は基本はIn Design内で「ページ構成+リンク」の形式でレイアウトと図面をいつでも最新のものに刷新できるようにして、効率化を図りたいところです。
各大学の要求は大きくは違わずとも、細かな部分で、プロジェクトの種類や重点的に評価する内容が異なります。レイアウトをする際に、条件に合わせたものを準備しましょう。
ポートフォリオのスタイルは希望校のスタイルを考慮した上で、方針を決めます。ポートフォリオのスタイルは自分自身のポートフォリオのテーマに通じるものが良いでしょう。
過去の図面を整理
ポートフォリオの作成は一昼夜ではできません。大学・事務所によって申請する期間が異なりますが、
- 12月頃 ポートフォリオ用の作品、希望校・事務所を選ぶ
- 2月~8月 年をまたぎ、図面作成開始
- 8月~9月 レイアウトのラフ案を作成
- 9月~10月 レイアウトと申請開始
- 10月~12月 微調整、第一回申請締切終了
- 12月~2月 第二回申請締切終了
このような時間の流れになります。
レイアウトに使用するファイル、リンクをするPSD、JPG図面は常に順序通りに命名してまとめておきましょう。そしてバックアップの図面は他のファイルやHDD、クラウドなどに保存しておきます。
InDesignのリンクフォルダ内では .psd、.ai の格式のファイルは自動で更新されるようになっていて、 .jpg、.pdf の格式は同じ名前の同じフォルダ位置に保存することで更新できます。
レイアウトは長い期間をかけて常に更新すべきですし、図面の素材をまとめておくことでかなり重複する作業を効率化できます。
各大学の要求など
申請するためのポートフォリオの条件は大学によって異なります。ここでは、UK、EU、USの大学の要求を見てみましょう。(既出の資料を参考にしています、最新版はご自身で確認してください)
AA(英国)
- 印刷物、A4以下のサイズ
- 学院内以外に、実際のプロジェクトデザインが必要(インターンなど)
- Portfolio Cover Sheetをネットでダウンロードし、その格式で提出
UCL(英国)
- 印刷物、大きさとページ制限なし
- 表紙に名前、専攻名、申請コードを記入
エジンバラ(英国)
- PDF データファイル、A4横型
- 表紙に名前、専攻名、申請コードを記入
- 2ページ目に、CV、Personal Statementを記入
- デザイン案は完成品のみならず、過程の模型、スケッチを記載
- 作品内に、絵画、彫刻、動画、パフォーマンスなどを盛り込んでも可
デルフト工科大学(オランダ)
- PDF データファイル、20MB以内、A4サイズ、30枚以内
- プロジェクトは5つ以内、なるべく新しいプロジェクト、卒業制作を含む
- 必ずひとつ以上の個人のプロジェクトを載せる
- 建築デザイン専門のプロジェクトは二つまで
- デザイン案に、個人の技術、構造、建造スキルを体現する
ミラノ工科大学(イタリア)
- PDFデータファイル、15MB以内
ETH(スイス)
- PDFデータファイル、A4縦型
- 16ページを超えない
- 表紙に名前、学校名、申請コードを記入
- 2つ目までのプロジェクト毎の枚数は4ページ
- 毎ページに要求あり
- 3つ目のプロジェクトは3ページ以内
GSD(米国)
- PDFデータファイル
- 30ページ以内
- ページは見開きが2枚という換算
コロンビア大学(米国)
- 印刷物、A4サイズ以内
- 厚みは1.27cm以内
ペンシルベニア大学(米国)
- PDFデータファイル、10MB以内
- 10×12’ 紙面は30ページ以内、10×24’ 紙面は20ページ以内
- 目次はページ数に入れない
- 5つのプロジェクト
- プロジェクトの詳細を記入(学術、分野、チーム、個人など)
ページ数の制限がある大学へ申請を考えている場合、デザイン案を思い切ってコンパクトに省略する必要があります。レイアウトを始める前に何が必要なのかを必ず確認しましょう。
他にも、必要な材料を指定している事務所があるのでぜひ公式HPなどから問い合わせてみましょう。
ポートフォリオのスタイル
ポートフォリオのスタイルを決めて全体に統一感を出しましょう。前述の色調の説明にもあったように、
- スタンダードカラー
- ダークカラー
- モノクロ
のような色調、線型をできるだけ同じスタイルで合わせると、スッキリして、ポートフォリオの印象もかなり強くなります。
また、建築系のポートフォリオを閲覧できる「ISSUU」などで好みのポートフォリオ、参考にしたい例を探してみるのも非常に制作の役に立ちます。
YouTube内でも「Architecture Portfolio」などのキーワードで有用な情報を検索していきましょう。
印刷
PDFデータファイルではなく、印刷したポートフォリオしか受けつけない大学もあります。ポートフォリオを印刷する場合、使用する紙面の種類や特性、製本時の装丁によっても出来上がりの印象が大きく異なります。
紙面の種類として、上質紙、コート紙、マットコート紙などがありますが、色彩の発色を優先するとコート紙を使用すると良いと思います。上質紙は色彩は沈みやすく、マットコート紙は指紋が付きにくくなり、光沢が抑えられますが、発色も少し抑えられるような具合です。
自らスケッチブックのように様々な紙面をコラージュのように貼り付けるような方法もあるので、時間をかけて自分流に試行錯誤するのをおすすめします。
時間と労力とこだわりがあれば、自身で製本しても構いませんが、冊子をたくさん用意しなくてはいけない場合は、製本まできちんと請け負ってくれる印刷会社に頼みましょう。
印刷会社に頼む場合、表紙・裏表紙に特殊な凹凸処理を施して、装飾性を底上げできたり、特殊な素材を使うこともできます。店舗に相談してみましょう。
ポートフォリオを送る
印刷物を送らないといけない場合、空輸便にもいろんな方式がありますが、休日を含まない一週間、早めに送る必要があります。
時差がある場合、面接の案内などをうっかり聞き逃してしまうこともあります。大学側の住所や届いた時の通知などはしっかり確認しましょう。
補足
プレゼンボードの作成についてのポイントもまとめています。
製図表現についてのポイントをまとめました。
コンセプトの解説についてのポイントをまとめました。