北京都市の変遷と災害との関係まとめ
都市は度重なる想定外の災害を経て、市民が犠牲になったり、経済損失が出たりしました。今回はここ数十年の北京での災害と災害後の対策や変遷についてまとめようと思います。
災害一覧
1963年8月8日
63・8特大暴風雨洪水災害
-
死者35名・負傷者不明・経済損害1億以上
暴風雨の発生源は広営で、24時間内での降水量は464mmであり、これは北京では100年に一度の洪水とも言われていました。暴風雨による洪水は北京城区とその近郊202km²の範囲に浸水被害をもたらしました。
翌年、北京市内の洪水浸水対策が見直され、初めて排水標準が定められました。
1969年4月
珍宝島事件
-
死者不明・負傷者不明・経済損害不明
珍宝島事件後、北京は潜在的な戦争リスクの対策に面することになりました。
毛沢東の号令により、北京市内で大規模な防空壕の工程が進められ、毎年の9月22日が民防教育日に定められました。今でも避難訓練時に防空警報が五環外の区域で鳴り響きます。
1976年7月28日
唐山大地震
-
死者不明・負傷者不明・経済損害不明
北京で大きな揺れが観測され、平原地区では震度6が記録されました。
地震後、北京では8年間に渡る「地震地質会戦」が発起され、1978年に「工業と民用建築抗震設計規範」が制定され、1979年に「京津唐地区地震基本震度区画図」が公布され、北京市内の大部分の建築物に抗震処理が施されるようになりました。
1996年1月19日
1・19停電事故
-
死者0名・負傷者0名・経済損害不明
北京西部地区に大規模停電が発生し、都市ネットワークが中断され、地下鉄などの交通機関が停止、局部で暖房が供給されなくなりました。停電は二時間ほど続いたとされています。
全北京市の電気供給ネットワークを見直すきっかけになり、一年後の「5・16停電事故」をうけ、北京電気ネットワークの「9950工程」を推し進められました。これを機会に大幅供給ネットワークが改善されました。
1997年6月27日
東方化学工場爆発事件
-
死者9名・負傷者37名・経済損害21億以上
空前絶後の爆発事件が起き、1500名の消防人員が消火活動に動員されました。「業火が北京城の東の空を覆い尽くした」との情報も。
災害後東方化学工場は正常に稼働され、2012年に生産ラインを停止、その5年後に撤去されました。現在では北京市が進める緑化プロジェクトの中央公園を、その工場跡地に建設する予定です。
1998年ー2001年春
砂嵐
-
死者0名・負傷者0名・経済損害不明
北京で砂嵐問題が顕著になり、2000年に12回砂嵐を経験しました。
翌年、「京津砂嵐源改善工程計画(2001-2020)」が実施され、主に植林、防護林や水源の確保が行われました。北京放送で1998年に「空気汚染情報」が発信されるようになり、1999年に週報から日報に変更、2001年に予報情報がさらに増え、現在に至ります。
2002年8月23日
藍極速ネットカフェ火災
-
死者25名・負傷者12名・経済損害不明
4名の未成年者が店から入店禁止を受け、報復から店に放火しました。
北京市内の全てのネットカフェが営業停止し、「インターネットサービス営業場所管理条例」、「国務院による未成年者思想道徳形成の意見書」などの法規が発足されました。
2003年春
SARS
-
死者147名・負傷者不明・経済損害不明
3月6日、北京市で初めて病例が報告されました。4月6日、WHOが正式に疫病地区に認定。5月29日、北京で初めてSARS病例無増加が記録されました。6月24日に疫病地区リストから解除されました。
5月に「突発公共衛生事件対策条例」が公布されました。病院の伝染病対策レベルが飛躍的に上昇、隔離施設の建設や、問診空間の設計が見直されました。地下鉄やエレベーター内に「本日消毒確認」の掲示板が貼られるようになり、現在に至ります。
2004年2月5日
密雲元宵灯会群集事故
-
死者37名・負傷者15名・経済損害不明
密虹公園で開催された第二回迎春灯展にて、游客の橋の上での転倒がきっかけで多くの人が踏みつけられて死傷者が出ました。
事故後、全市内で安全検査と公共安全突発事件対策が義務化、ベルトパーテーションや安全柵が普及するようになり、翌年からの元宵灯会が中止になりました。
2005年12月4日
八達嶺高速道路事故
- 死者24名・負傷者9名・経済損害不明
炭化カルシウムを積んだトラックが操縦不能になり、客乗車に衝突、山溝で引火しました。
事故後八達嶺高速道路では大型積載車が永久に通行禁止に。2008年110国道が整備され、北京初の大型積載車専門の高速道路となりました。
2009年2月9日
電視文化センター火災
-
死者1名・負傷者8名・経済損害28.8億
元宵節夜間に中央電視台北部の建設工事場にて火災発生、原因は禁止区域での花火と爆竹によるものでした。
事故後、北京市内での火気禁止区域が制定され、春節時の花火爆竹禁止令が発足、建築外壁の保温層に可燃物が使用されている場合、警告表示が貼られるようになりました。
2011年7月5日
地下鉄動物園駅エスカレーター群集事故
-
死者1名・負傷者28名・経済損害不明
4号線の動物園のA口にて突然上昇中のエスカレーターが逆走、乗客が群集事故に巻き込まれました。
ほかの都市でのエスカレーター事故と照らし合わせられ、「GB16899-2011 エスカレーター製造と設置安全規範」が制定されました。地下鉄内でエスカレーターに関する非常時の措置についての動画が放送されるようになりました。
2012年7月21日
7・21特大暴雨
-
死者79名・負傷者28名・経済損害2095.2億
7月21日から翌日深夜まで、北京気象史以来最大の暴雨災害と洪水災害が発生。全市190万人が被害を受けたと言われています。
全北京市内の下降式立体交差橋が改造工事され、排水設備と水没メーターが設置されました。「北京市河湖保護管理条例」と新「都市降雨システム計画設計暴雨水流計算標準」が更新されました。スマホのアプリに水没マップを表示する機能が追加されました。
2013年1月中下旬
空気重度汚染
-
死者不明・負傷者不明・経済損害不明
2013年1月中下旬、北京で連日重度の空気汚染が観測され、呼吸器の不調を訴える患者が急増、「雾霾」という単語が市民に認知されるようになりました。
北京市空気汚染情報のニュースにpm2.5指数が新たに追加、「大気汚染防止行動計画」を公布。2015年に「北京市空気重度汚染対策書」が公布されました。春節時の花火や乗用車の排気が取り締まられるようになりました。
2015年4月11日
大屯路トンネル内衝突事故
-
死者0名・負傷者1名・経済損害不明
当日夜、二台のスーパーカーが大屯路トンネル内で速度超過した状態で衝突事故を起こしました。
この事故を戒めに、北京で速度超過に対する取締がさらに厳格化され、トンネル内や道路に減速帯と監視カメラが増設されるようになりました。
2020年1月
新型コロナウイルス肺炎(現在進行中)
-
死者未知数・負傷者不明・経済損害不明
1月20日、北京で初めて2例の新型コロナウイルス肺炎の患者が確認されました。
この災害ではどのような対策が講じられるようになるのでしょうか?
北京都市での災害と変遷についてのまとめでした。