抜群の快適さ…!建築デザインで使える左手デバイスについて
建築デザイン用途に使える左手デバイスについて解説をしていきます。
左手デバイス
左手デバイスとは?
左手デバイスまたは非利き手デバイス(後述、左手デバイスと統一して呼称します)と呼ばれる拡張/補助入力ツールを使うことで、デジタルイラスト、ブログ編集、動画編集、ゲーム、ウェブページ閲覧において操作を片手でこなせるため、快適な操作ができるようになります。
しかし建築デザイン専用に売り出されているデバイスは種類が少ないため、少しでもCAD製図や3Dモデリングの操作性を改善するためには実用性の高いデバイスを採用する必要があります。
左手デバイスの特徴
操作の効率化
現在の主流建築ソフトの仕様上、操作環境のベースはマウス+キーボードで、右手でマウスを握り、左手で数値やコマンド、操作の方向を制御する形になります。
何千、何万回と繰り返す操作やショートカットを左手デバイスによって簡略化することで、建築家の職業病である腱鞘炎を軽減できたり、作業を格段に速くすることができます。
左手デバイスの用途
左手デバイスを使用するうえで、
- CADなどの製図をし、数値入力の補助として利用する場合
- 3Dモデリングのショートカットキーに使用する場合
- マウスホイールを使わずに拡大縮小/ページロールをする場合
などの状況が考えられます。
左手デバイスを使う理由
キーボードと独立させて左手デバイスを利用する理由は、主流のモデリングソフトやAdobeソフトには初期のショートカットキーが設定されていて、従来のキーボード上で独自にマクロを設定すると、
- ソフト毎にショートカットキーを設定する必要がある
- バージョン更新や再インストール時にマクロが初期化されることがある
- 異なるパソコン上でショートカットキーを共有しにくい
上記のような状況が散見されるため、デバイスに設定を内蔵できる機能を持つ左手デバイスを選び、一度設定をするだけで、半永久的にショートカット集を記録できるといったメリットがあります。
一般的な左手デバイスは3,000円~15,000円ほどの価格帯でかなり高めですが、使い方によっては作業効率を格段に向上させることから、操作に慣れた建築従事者や日常的にCAD、3Dモデリングに触れている上級者には必要不可欠のアイテムとなります。
左手デバイスの接続方法
左手デバイスはあくまで操作補助のツールなので、主要ツールの操作性を妨げるようなものを避け、携帯する場合は携帯性も考慮しなくてはなりません。
入力デバイスの性質上、
- 有線接続型
- 無線接続型
- Bluetoothによる接続
などの種類があり、それぞれの接続方法に特徴があります。
有線型はUSBポートに接続線を繋ぐことで使用でき、デスクトップPC本体から繋ぐ場合長さが不十分だったり、配線の数が一度多くなると煩わしくなりますが、電池要らずで操作感は優れています。
無線型はUSBポートにポータブル受信機を挿し込むことで配線の煩わしさから解放されますが、ポータブル受信機を無くすと使えなくなるのと、配線による電力が供給されないため基本は電池または充電が必要になります。
携帯性が良いのはBluetoothによる接続ですが、BluetoothはPC使用時に再接続されるためPCの睡眠状態から立ち上がりが少し遅いことと、電池・充電が必要なことと、PCでのBluetoothの接続が不安定な時に操作性が落ちるという注意点があります。
携帯することもあるノートPCには無線型、Bluetooth型のデバイスを、据え置きで使うデスクトップPCには有線型のデバイスを利用するのを推奨します。
他の入力デバイス
左手デバイス以外に、デザインの作業環境を改善する目的の入力デバイスとして、
などが挙げられます。こちらも用途に応じて使い分けていきましょう。
キーパッドデバイス・3Dモデリング・Adobeソフト
3Dモデリング・AdobeソフトはCAD製図とは性質が異なり、製図操作に必要な厳密性・精密性よりも、モデル成型までの過程にかけた工数、効果が重視されます。
そのため数値による操作の制御は相対的に少なくなり、様々なツールの応用、ショートカットキーの利用が見られるようになります。
マクロの設定
キーパッドデバイス上のキーにマクロ(macro)を振り分けることで特殊な複合操作をワンタッチで行えるようになります。
マクロはオンラインゲームなどでゲームプレイヤーがコマンド操作を補助するために利用することもある、個人のために設定・設計した入力方法のことです。
例えばAdobe Photoshopに使うキーとして、
- レイヤーをモノクロにする:Ctrl+Shift+Alt+B
- 全レイヤーを統合したコピーをつくる:Ctrl+Shift+Alt+E
- 全レイヤーを統合する:Ctrl+Shift+E
- レイヤー変形:Ctrl+T
- レイヤー移動/微調整:Shift+矢印キー/矢印キー
- レイヤーを位置を変えずにペースト:Ctrl+Shift+V
上記のように、建築用プレゼンボードの作成に欠かせない頻出コマンドに関わらず、キーを複数同時入力しなくてはならないものは、片手のみの入力が難しく、コマンド自体も混同しやすいため、ミスタッチが増えて作業が非効率になりやすくなります。
慣れも必要ですが、その対策として両手で操作するようなキー、または三個以上のキーで構成されるショートカットキーをマクロとしてキーパッドの専用の駆動ソフトにコマンドを登録することで、かなり快適に操作できるようになります。
入力方法の違い
AutoCAD、ArchiCAD、Rhinocerosなどのモデリングソフトではコマンドラインとショートカットキーの両方による入力方法があります。二つの入力方法には、
- コマンドラインはキーボードによるコマンド+「Enter」で実行
- Ctrl+Sなどのショートカットキーは直接実行される
といった区別があります。
コマンドラインはツールの種類が多い時に特定の英単語を入力するだけでツールを引き出せるので便利ですが、よく使うツールのコマンドのマクロを設定したり、特定コマンド+「Enter」キーとしてマクロを設定することで、異なるツールを交互に使用する際に絶大な利便性を誇るようになります。
一方入力頻度の高いショートカットキー、
- Ctrl+C:(copy)対象を複製
- Ctrl+V:(paste)複製した対象を貼り付ける
- Ctrl+Z:(undo)操作の一歩手前に戻る
などの簡単なショートカットキーは特別にマクロを設定する必要はありませんが、
それらと混同しやすい頻度の高いキー、
- Ctrl+Shift+V:(paste in place)複製した対象の位置を保持して貼り付ける
- Ctrl+Y / Ctrl+Shift+Z:(redo)操作を一歩先に送る
といったキーと組み合わせて快適に使う場合、マクロ1(複製copy)+マクロ2(その場に貼り付けpaste in place)のような設定の工夫をすることでマクロの操作を覚えやすくなります。
キーボードの打鍵感
キータッチの使用感を左右する要素はいくつかあり、
上記のものが打鍵感と関係してきます。
キーピッチ
キーピッチはキーの中心から隣接するキーの中心までの距離を指し、
- 一般的なの規格では19mm
- コンパクトタイプでは16mm
そしてメーカー毎にデバイスのキーの配置がさらに異なるため、正確なピッチの種類はこの限りではありません。
スペースが気になる方は16mmのキーピッチを選択するのが良いと思いますが、慣れ親しんだ打鍵感で使いたい方は19mmの規格を選ぶと良いでしょう。
キー構造
キー構造を大きく分類すると、メンブレン(Membrane)、メカニカル(Mechanical)と二種類に分けられますが、メンブレンキーボードは一体型で、メカニカルキーボードはキー個々が独立している構造になっていて、
のような違いがあります。
デバイスのキーの数が増えると故障する可能性も増えるので、できればメカニカル構造のデバイスを検討するべきでしょう。
打鍵軸
メカニカルキーボードの打鍵軸を選ぶことでさらにキータッチ時の打鍵感、押下圧(おうかあつ)をアレンジすることができます。
- 打鍵軸名(cherry社):キーの特徴となります。
- 青軸:キー入力時にカタカタというクリック音がある、押下圧が重め
- 赤軸:キー入力が静かで、押下圧が軽く、長時間使用に適している
- 茶軸:青軸と赤軸の中間、適度なクリック音がある、押下圧が重め
- 黒軸:キー入力時のクリック感が少なく、押下圧が最も重い
- 銀軸:高速入力に適した軸、キーが浅く、反応速度がかなり速い
- ピンク軸:静音性を強化したキー、赤軸より静音性が高い
よく見られる打鍵軸は青軸、赤軸、茶軸の三つで、メカニカルキーボードでは個別のキーに静音リングを付けることも可能です。
初めてメカニカルキーボードに触れる方にはクリック音が目立たない赤軸、茶軸を選び、作業環境で静音性が気になる方はピンク軸をおすすめします。
青軸は比較的快適な打鍵感があり、クリック音は個人で使用する分には問題ありませんが、高速打鍵時には公共の場では騒音になるかもしれません。
銀軸はゲーマーなど高速入力が要求される場面で真価を発揮しますが、製図やモデリングにおいては少し使いづらいという印象があります。
一方黒軸は打鍵の力が強い方には好評ですが、独特な押し込むストロークに慣れるまでは時間がかかり、長時間打鍵しているとかなり疲労を感じるようになります。
オススメの左手デバイス
Kooletronメカニカルキーボード
3DモデリングやCAD製図で最も使用感が良かった・作業場で評判の良かったものが、Kooletronの片手メカニカルキーボード(赤軸)です。
- ちょうど有線接続型の拡張キーボードを半分にして、左手の届く範囲のキーをほぼ全部網羅した形のデバイスとなります。
デバイスのキーの数が43個あり、Hキー、Mキーなども付属している珍しい仕様のため、3Dモデリングによく使われるハイド(Hide)、ムーブ(Move)などもマクロとして設定できる実用性の高さを実感できます。
導入時のソフトウェアとキーマップの手順が少し複雑でしたが、一度キーマッピングを終えると設定が内蔵されるので他のPCでもスムーズに使えるようになります。
据え置きで使う分ではまさに快適そのものです。
amazonでの価格は8400円~9900円(打鍵軸を選べる)とお高めでした。
Kooletronキーボードのメリット
Kooletronキーボードでは、
- Adobeソフト・モデリングソフト・Officeソフトに対応可
- 従来のCtrl、Shift、Esc、Enter、Winキーなども使いたい
- 数値入力も一応可能(F1~F7に数字を割り当てる)
- キーボード操作とほぼ同じ使用感+マクロ操作が可能
上記のような利点があります。
左手デバイスと聞いてエルゴノミクス・ゲーミングデバイスのように突飛な形状をしたものや、イラスト用に使われる片手で握れるデバイスの購入を検討した方もいると思いますが、多岐にわたる使用用途が要求される建築デザインでは汎用性の高さが重要になります。
使用強度に合うものをぜひ選択しましょう。
左手デバイスを選ぶときの注意点
規格化されたキーボードと異なり、メーカーや商品モデルによってはサイズ感、使用感、キー配置が国内仕様のものと海外仕様のものとでかなり違ってきます。
海外製のデバイスはかなり大きめに作られているので、スティックなどに親指をつけた場合、最も遠い小指のキーが届かなかったり、逆に手の大きい方が小さいサイズのデバイスを使うと疲労の原因になる恐れがあります。
実際に店舗に趣いてデバイスの大きさや使い心地を確かめたり、必要なキーが商品に抜けていないかどうかを確認するのが無難でしょう。
テンキー・CAD利用
CADの操作はコマンドライン(Command line)に特定のコマンドを打ち込み、Enterで命令を実行/重複します。LineやMoveといった命令では数値を繰り返し入力するため、CAD製図にはテンキーを備えましょう。
ノートPCの種類によってはテンキーが備わっていないものがあるので、テンキーを左手デバイスの一つとして個別に購入する選択肢もあります。
右利きの場合
デスクトップPCなどでCADを操作する場合、基本は右手で常にマウスを握り、左手でキーボードショートカットキーとテンキーを打って操作します。
テンキー付きのキーボードのテンキーは右側に配置されているものが一般的なので、
- テンキーが付属されていないキーボード
- テンキーパッドをキーボードの左側に配置
上記のような組み合わせをすることで、右手をマウスから離さずに左手側のテンキーでCAD命令の数値を入力をすることができます。
無論、キーボード上段より数値を入力できますが間隔が左右に開いているため、キーボード操作に非常に長けている方を除き、左手で操作した際でもテンキーの方が使用感が向上します。
左利きの場合
左利きの場合、マウスを左手で握って、右手でキーボードのショートカットとテンキーを操作するため、市販されている一般的なテンキー付きのキーボードでも順手で無理なく操作が可能です。
テンキーの条件(据え置き型)
CAD製図にふさわしい据え置き型のテンキーとして、
- 「0~9」、「,」、「.」、「Enter」、四則演算キーがある
- 「Tab」、「00」キーがある
- Numlockキー非連動タイプのテンキー
- キーボードと入力感、キーの角度、デザインを合わせる
上記の条件を満たしたものを選ぶことをおすすめします。
特筆すべき点で言うとテンキーデバイスの中には、外付けのNumlockキー非連動タイプのものでないと、PC本体のNumlockをオンにした場合、外付けのテンキーも連動してNumlockがオンになり作動に不具合が生じるため、連動しないものを推奨します。
「,」キーや「Enter」キーがないものがありますが、数値入力の際にいずれもよく使われるキーですので、購入前に必ず確認しましょう。
テンキーの条件(手持ち型)
厳密には10個の入力キーのあるものに数字を振り分けてテンキーとして利用する形になりますが、据え置き型のテンキーと差別化を図る意味で、
- 片手にすっぽり収まり、ガラケーのように片手操作が可能な形
- スティック、あるいはスクロールパネルなどが搭載されている
- 「,」、「.」、「Enter」などのキーをスティックで代替できる
上記のようなものを使うこともあります。
片手で持てるサイズのテンキーは、ある程度自由な姿勢で操作ができることが強みです。一方でサイズの特性ゆえボタンが小さく、入力の精密性、入力速度は据え置き型に比べ劣る部分が目立ちます。
オススメの無線テンキー
ミヨシ MCO ワイヤレステンキー
CAD製図で評判の良かったものが、ミヨシ MCO Windows用 ワイヤレステンキーです。
- パンダグラフ式の無線型テンキーで、一般的なテンキーと配置が異なり、「1」,「4」,「7」のキーの左側にさらにキーが追加され、「0」と「00」のキー位置が少し特殊なので使用には慣れが必要ですが、「,」やTabキーなどの特殊キーを左手の小指で入力する形になり、ExcelやAutoCADでの利用に適しています。
ワイヤレス型の電池式なので省電力モードから立ち上がる時に少し遅延がありますが、操作感は良好です。
Numキーでテンキーの数字入力を矢印キーとPgUp、PgDnなどのキーに切り替えられるので使えると便利な機能です。
テンキーのないノートPC用に左手で使うテンキーとして重宝できます。また素材がすごい強いわけではないので、布地のケースに入れて携帯すると良いでしょう。