MacBook Air(2020)が新たに発売されたことを機に、建築デザイン用MacBook Airの使い方について考察していきます。
MacBook Air
MacBook Air(2020)はアップル社のノートPCで、2018年版、2019年版からさらにキーボードやCPU、ストレージや価格帯を刷新し、新しい体験をユーザーに提供し続けているノートPCのシリーズです。
PCスペックの解説
始めに建築用のPCに必要な性能について確認しましょう。
メモリ条件
ArchiCAD、Revit、Rhinoceros、AutoCADなどの建築用モデリングソフトの作動環境では、16GB以上のメモリを推奨しています。メモリ容量が16GB未満の場合、ソフトが起動しない場合があります。
CPU・GPU条件
CPUはPCのモデリングソフトの起動速度、基本的なファイルの読み込み・保存速度の役割を持ち、GPUはソフト内での操作を反映する速度を左右する要素になります。
ArchiCADではCPUプロセッサーのコア数が4コア以上を推奨しています。
独立GPUと内蔵GPU
ArchiCADは公式で作動環境にオンボードグラフィックス(通称内蔵GPU)を使用すると独立GPUに比べ、極端に性能が低くなることを示唆しています。
内臓GPUは消費電力が少なく発熱量も抑えられますが、基本性能が低く、メモリを占領してしまうため、負担のかかる操作には弱い性質があります。
Unix OS対応ソフト
Unix OSに対応しているソフトですが、まずAutoCAD、ArchiCADはWindows OSとUnix OS(Mac)の両方に対応しています。
一方BIMソフトのRevitはWindows OSでの使用を前提にしているため、Macで使用する場合はBootCampサポートなどでWindows OSを使えるようにする、あるいはMac OS内で代替できるソフトを探す必要があります。
MacBook Airモデルの条件
上記の注意点を踏まえ、建築デザインに使われるPCでは、
などの推奨条件があります。
条件を踏まえた上で、MacBook Air(2020)のモデルの詳細を見ていきましょう。
- MacBook Air上位モデルカスタマイズ
- 本体カラー :スペースグレイ・ゴールド・シルバー
- ディスプレイ:Retinaディスプレイ13.3インチ(解像度:2560×1600)
- CPU : 10世代 Intel Core i5 4コア1.1GHz~3.5GHz (Core i7まで変更可)
- メモリ :LPDDR4X 3,733MHz 16GB
- ストレージ :PCIe SSD 512GB (最高2TBまで変更可)
- GPU :Intel Iris Plus Graphics (内臓GPU変更不可)
- キーボード :Magic Keyboard
- バッテリー消費:49.9Wh
- バッテリー駆動時間:Webサイト閲覧時最大11時間
- 重量:1.29kg
- 税別値段:134,800円
となります。
MacBook Airの強み
美しい筐体と美しい画面
MacBookシリーズでは筐体に再生アルミニウムを使っているのが特徴で、上質な仕上げはAppleユーザーから根強いファンを得ている点となります。
さらにシリーズを通してRetinaディスプレイの解像度の高さ、色彩の鮮やかさ、画面の美しさはApple社の強いブランドイメージを体現している部分でもあります。
キーボード
Magic Keyboardに仕様が変更されたことによって、打鍵時の騒音と感触が大幅に改善されました。静かなタイピングで外出時でも周囲の方々に不快感を与えることなく作業を続けられます。
CPU性能の向上
上位モデルからはCPUを4コアに選択できるようになり、建築デザインのためのノートPCとして初めて実用的なレベルで起用できるようになりました。
ストレージ
ストレージ容量が前シリーズのMacBook Airと比べて2倍になり、上位モデルを選択してからはストレージのSSDを2TBまで拡張できるようになりました。
データを大量に収集する必要がある建築デザインにとって、6万円ほどでSSD 2TBが実現できるのは非常に嬉しい話なのです!
その他
MacBook Airの真骨頂は、持ち運びのストレスが非常に少ないノートPCであること、そしてApple社の製品であるiPad、Mac、iPad、iPhone、AppleWatch、AppleTVなどのデバイス・サービス間で強い互換性があることです。
特にBluetoothによるAir drop機能は他デバイスの写真やテキスト、動画などをワンタッチで共有・転送することができ、Windows PCにはないSNSでのシームレスな体験や生活面でのバックアップが充実しています。
MacBook Airに伴う問題点
GPU問題
MacBook Airの下位モデル上位モデルで一律してオンボードグラフィックス(内蔵GPU)が採用されていて独立GPUに変更が出来ないため、ハイエンドな3Dモデリングソフトでの描画はかなり不安が残ります。
排熱問題
排熱デザインが施されていない場合、高負荷3Dモデル操作やCPUなどの過放熱よってにPCの性能が著しく落ちる恐れがあります。
負荷作業の多い建築モデリングではMacBook Airでも例外なく排熱問題が起きてしまい、大きくPC寿命を減らしたり、性能を落とすかもしれません。
OS統一問題
MacはWindowsに比べ、ソフトのカスタマイズ性や対応の幅で劣る部分がありますが、だからといってBootCampを使ってPC内でWindows OSとUnix OSの間を行き来してソフトを操作するのは時間的に非効率です。
事前に使うソフトの種類、デザインのスタイルに応じて、MacのOS内だけで操作が完結してもいいように使用するソフトを明らかにしましょう。
ベンチマーク問題
ベンチマークはPCの性能を数値化した指標のひとつです。
プログラマーは良い結果を残せるように性能を特化させることがあり、レビューのサイトで特定のベンチマークの結果が良くても、実際の作動環境でのパフォーマンスとは異なります。
ベンチマークの結果だけで性能を判断するには客観性に欠けるため、ソフトのメーカーごとに推奨されているスペックや身の回りにいる使用者の意見を参考にするべきです。
使用プラン
性能・OS面
Mac OSを使う場合、
- ArchiCAD(高性能3Dソフト)
- Rhinoceros
- SketchUp
- VectorWork
などが使用できるモデリングソフトです。
しかし、高負荷なモデリングの処理では性能が落ちることから、
- 初期~中期までの3Dモデリングデザイン
- 簡易なレンダリングやポスターサイズまでの画像ファイルを処理
- 短時間動画編集・整理
- 敷地資料や文献の収集
- プレゼン用PPTなどの編集
- リモートワーク、中継会議、連絡など
を主軸にこなすPCとしての役割を持たせることになります。
結論
結論から言うと、MacBook Airの性能ではGPU、高負荷処理・操作に関しては満足のいくパフォーマンスは難しく、一般的な建築用PCとしては適さないと思います。
ところで、学生や教員に向けたMacBook Airが果たして高負荷の作業を請け負う必要性があるのか?と問われると、確かに新規の方が初めてPCに触れる段階では建築ソフトの性能をフル活用することはほぼないのかもしれません。
高性能なPCに頼る以前に製図をしたり、敷地調査をしたり、模型を作ったりしてデザインの基礎を磨く過程があります。
私からはあえてデスクトップPCやノートPC、iPadなどのタブレットを持っていない新規の方だけにMacBook Airをおすすめします。
もし、既にPCを所有したことがある方であれば、さらに性能の高いMacBook ProやDell、MSI、Alienware、AMDなどのゲーミングPCの購入を検討してみるのも良いと思います。
補足
さらに詳しく建築用ノートPCについて知りたい方へ。
マウス・周辺機器についての詳しく知りたい方へ。